「古着大好き」とかほざいてるサブカルおしゃクソ野郎の皆さん、どうか僕も仲間に入れてください

エッセイ

 ファッションに疎い、というより、「おい、あのオタク、頑張っておしゃれを目指してるぞw」とか思われそうだという持ち前の自意識過剰で「おしゃれ」を自ら遠ざけてきた僕は、めったに服屋に行きません。今風のおしゃれっぽい(と僕が考える)洋服を着て外に出ることもそうですが、服屋に居ることすらも無性に恥ずかしく感じてしまうからです。服屋の棚の間を歩いていると、その服屋に着てきた服、手にとるアイテムのセンスなど、すべてが店員や他の客に品定めされているような気がしてきて、自ずと足取りは引きつり、周囲を警戒する目は激しく泳ぎ回って、万引きでも企てているかのような挙動不審ぶりを見せる自分を店内の大きな姿見の中に発見し、店から退散せざるを得なくなってしまいます。結果として各季節を、1週間足らずでローテンションしてしまうような枚数の洋服だけ着回して過ごしています。恥ずかしい話、そういった事情を察してか、母が仕送りとして配送してくれたダンボールを開くと、白米の詰まった袋やレトルト食品と一緒に新品の洋服が入っている、ということが未だにあります。

 こんな性格なので、服に限らず僕はほとんど外で買い物をすることがありません。とはいえ、インターネット通販がこれだけ発達した現代においてこのスタイルは当たり前というか、まだお前ら店舗まで出向いてんの?wというぐらいの気持ちもあります。服も通販で買えばいいじゃん、と。え、試着しないと画像だけじゃサイズがわからない?胸囲とか丈の数値書いてあるでしょ。「ファッションセンス」っていうのには、そういう情報から実際のサイズを予測するような能力は含まれてないんだ笑

 そんなフェイク野郎のお前らとは違って外出の少ない僕ですが、進んで買い物に行くお店があります。ズバリ、ブックオフとハードオフです。

 「オタクのイメージそのままじゃねえか、キッショ」そんな声が聞こえてきそうです。そんなこと、言うもんじゃありません。地獄に落ちなさい。

 うだが「デートして以来女の子から返信が来ない〜~(泣)」とか言って悲しんでいた頃、僕はそんなことも知らずに大阪の友達の家に遊びに行っていました。僕の好きなバンドがライブをやるというので、その友達と見に行くことになったのです。音楽オタクである友達と迫力に満ちたライブを体験したりCDショップを巡ったりする楽しい時間の裏で、うだがあんなに苦しんでいたとは……。メシがウマい!!!

 そんな感じで土日を楽しんだわけですが、休学中という立場からでしょう、大阪の彼は平日の5日間に8時間フルでバイトが入っているというほとんど正社員のような生活を送っているため、僕は彼が働きに出るのを見送ったあとの時間を一人で過ごすことになってしまいました。なんだか、ヒモの気持ちがわかったような気がします。とりあえず12時まで寝直しました。

 そうやって人が働いてる最中にグースカ寝て過ごすことには一種背徳的なよろこびがありますが、よく考えてみるとこれは大阪に来てまですることではありません。どこかに出かけよう。そう思ったものの、電車ですぐの場所にある梅田に、僕が一人で行けそうなところは見つかりませんでした。

 そこで僕はどこに向かったか。もうおわかりですね。そう、郊外のハードオフに出向いたのです。

 「ねえ、それも別に大阪まで来てすることじゃないよね」そんな声が聞こえてきそうです。いいから地獄に落ちなさい。

 ハードオフっていう場所は、僕にとっては天国のような場所なんです。そんでお前らが落ちるのは地獄です。お前らは徳が低いから、ジャンクコーナーに積み上げられた謎の機械類の群れを見渡したときのあの高揚感がわからない。レトロゲームコーナーを歩き回って、ゲームボーイのボディに書き込まれた拙い子供の字の落書きを発見したときの、時代を超えても通じ合う何かがあるんだというあの確かな実感がわからない。地獄に落ちなさい。

 功徳を積んだ選ばれし私(わたくし)は、天国であるところのハードオフを2時間ほど満喫し、一律110円コーナーでブラーのThe Grate Escapeとレッド・ホット・チリ・ペッパーズのベストアルバムの2枚を購入しました。音楽オタクの彼ほど音楽に詳しくない僕には相場がわかりませんが、なかなかいいお買い物ができたのではないかと、僕の心は満足感でいっぱいになりました。

 ところで今回訪れたハードオフは、オフハウスという洋服、インテリア、家電などを扱う姉妹店と隣接していました。1階がオフハウス、2階がハードオフという構成で、1階の明るくて少しおしゃれっぽい小物が溢れている様子にたじろいだ僕は来店時逃げるように2階へ駆け昇ったわけですが、先程のハードオフでの買い物で気分をよくした僕は、気が大きくなったのか、普段店頭で服買わないけど、たまにはこういうところでいっちょ服を買ってやるか!!という考えに至りました。

 洋服が陳列されているゾーンに忍び寄る僕。近くまで来ると、やはり他人の目が気になり始めました。とりあえず、人気のないスポーツウェアのコーナーへ。ハンガーラックにかかった商品に手をかけて一つひとつ眺めるふりをしつつ、あたりの様子を盗み見ているうちにふと思いました。階が別れているとはいえ、単純に考えてこの建物にいる人間の半分はハードオフ愛好者、すなわち心の友。したがって、他の服屋にいるときのように怯える必要はないのだと。

 気を取り直した僕は、改めてラックのスポーツウェアを見ていきました。そこで発見したのです。この服を。

 「これがどうしたっていうんだ」と思われるかもしれませんが、これ、さっきアルバムを買ったブラーのボーカル、デーモン・アルバーンがめっちゃ着てそうなタイプのトラックジャケットなんです。これは運命だ。そう思いました。

当時のイギリスではこのジャージ姿のようなカジュアルなファッションが流行していたらしく、したがってOasisっぽい服だということもできる。

 そんな思いに突き動かされて、ブラーがめちゃくちゃ好きというわけでもない僕ですが、ついついこの「古着」を1650円(税込)にて購入したわけです。

 そう、僕は、「古着」を買ったのです!!

 皆さん、「古着」ですよ!?

 「古!着!」ですよ!!!???

 大学生にもなってお母さんに服を買ってもらっている、ファッション界のマフィアシティで言えばLv.1チンピラであるところの僕が、Lv.85組長相当のファッションレベルをもつ(と思われるので恐ろしくて手が出せなかった)あの「古着」を購入したんですよ!!!!!

 チラッ……

 チラチラッ……

 あの……。いや、えへへ……。

 もう、いいですよね。

 いや、その。わかるでしょ……?

 僕はもう、君たちの側に居るってことで、いいですよね……?

 うん、そうに違いない。いや、間違いないね。うんうん。

 その、ごめんね?地獄に落ちろ、とかなんとか言って。うそうそ笑 一緒に極楽浄土行こうね。とりあえずまずは、梅田一緒に行こうよ。ね。ていうか何?笑 ハードオフって笑 ウケるね笑 店舗がゲーミングPCみたいにレインボーにライティングされてそうだよね笑 え?よくわかんない?ご、ごめんごめん笑

 ところでさ、仲間になったついでに聞きたいんだけど、いいかな?

 この「古着」、めっちゃおばあちゃん家の匂いするんだけど、これどうやったら取れるの?????

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