修士1年、11月。
そろそろ就活がヤバい。
いや、学部3年、修士1年の3月に情報解禁、翌年度6月に本選考開始という政府の定める方針からすれば本来まだ焦る時期ではないのだが、ご存じの通り忌まわしい「就活の早期化」が進み、多くの就活生が学部3年(修士1年)の6月あたりには夏インターンのエントリーを開始している。企業と就活生の共犯的なフライングによって解禁日のルールは既に形骸化し、今後も就活の早期化は加速していくことが予想される。
私も研究室同期の動きを参考にいくつかの企業にエントリーシートを出し、オンライン実施のものではあるが夏インターンに2つほど参加した。
それが9月のことだ。
はっきり言って何も感触がない。インターンに参加すると人事の目に留まった学生に早期選考の声がかかるというが、そのような気配もない。当然だ。チームでIT系の事業提案をするという内容のインターンに5日間参加したのだが、後日企業からメールで送られてきたフィードバックには、定型文と思われる部分を除くと、「不明点を確認しながらグループワークを進める姿が印象的だった」と1行書かれているのみだった。
私自身もその5日間のグループワークの中で、それ以外の発言をした記憶がない。そもそもコミュニケーション能力に難があるのに、気の利いたアイデアも出てこないとなると、他のメンバーの意見に何かコメントするくらいのことしかできないが、自分のアイデアがない手前賛成も反対もなく、フィードバックの通り不明点を見つけて質問し、議論に参加してる感じを演出するのがせいぜいだった。
インターンも後半になると議論が複雑・高度化し、他メンバーの発言内容が半分も理解できなくなっていたが、この頃にはもう連日朝から夕方まで緊張が続くことの疲れと、社員が話し合いを見守りつつ人材としての評価を下している中、明らかに自分の発言量が少ないことへの焦りで精神的に参っており、「よし、言ってる意味が分からないから質問できる」といった調子で議論についていけないことを喜んでいた。検挙数を確保するために(?)道路標識の見えにくい場所で交通違反を待ち受ける警察と似て、目的と手段を完全に取り違えている。それでも、警察は街の平和を守る存在として人々の生活に安心を与えているが、挙動が変な私はアパートのエレベーターに乗り合わせた女性を不安にさせている。僕が何をしたって言うんですか?拳銃をください。
なぜこんなインターンになってしまったのだろうか。私のコミュニケーション能力、問題発見・解決能力、思考力、その他社会人にとっての必須スキルが軒並み要求水準を下回っている、というのが要因の一つになるだろう。自分で書いていて悲しすぎる。自動車学校で適性検査を受けたときの気持ちを思い出した。判断力だとか注意力だとかのスコアを示したレーダーチャートの上で、小さな小さな六角形が卑屈に歪んでいた。キュウリの栄養素のグラフかと思った。
だが原因は能力不足だけではないとも思う。どうも私は無意識のうちに、過干渉気味の両親や何よりも自分に対して、インターンへの参加を「自分は就活している」というアリバイ作りに利用していた節がある。というか完全にそうだった。エントリーシートを提出し、選考を突破してインターン参加が決まったときは確かにうれしかった。だがいざインターンが始まると、自分のふがいなさが嫌になるばかりで、気づけば早くこの苦痛が終わってほしいと祈るようになっていた。とりあえずインターンに参加できたのだからもういいだろう、早く楽になりたい。就職なんか、もうどうでもよくなっていたのだ。
そして10月。なんか昼まで寝たりバイトしたりしてたら終わっていた。
私は今ここに、真の就活を始めることを宣言する。見せかけの就活、ごまかしの就活は終わりだ。今ならまだ間に合う。真の冬インターンに参加し、真の早期選考を勝ち取り、真の内定をゲトりまくる。そのとき私は、真の益荒男(ますらお)になっていることだろう。とりあえず今日は真の自己分析をすることができたので、真の酒(タカラ焼酎ハイボール)をかっ喰らって寝ようと思う。
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